管理人:下村が初めて犠牲祭について教わったのは昨年の今頃、バングラデシュ人の先生からでした。オンライン英会話を10年受講してきて、なおかつ知り合いにも数名イスラム教徒の人もいるにも関わらず、このお祝いの事は全くもって知らなかったので、初めて聞いた時にはそりゃビックリ仰天でしたが、異文化を知るという意味では大変意義深いと思ったものです。
さて、お国によって若干名称は違うかもしれませんが、その祝祭日はバングラデシュではEid ul-Adha(イード・アル=アドハー)って呼ばれているそうです。
その日には各家庭で牛を屠殺するねん。僕の家も毎年牛1頭買ってきて家の前の道路で首を刎ねるから、その後2週間くらいは通りがずっと血の臭いでクサい。
ほええ、何じゃそりゃ! ……先生のお父さんが、その牛、首カットするの?
自分たちでは殺らへんよ。肉屋さんを雇って、解体してもらうねん。だから、イード・アル=アドハーの日はもう、バングラデシュ全土が血だらけやで。
街中が血の海 & 国中に獣臭が充満するお祭り?
一切の予備知識無しで聞くとホンマに何のこっちゃなので、まずその宗教行事の背景を先生に解説いただきますと、
コーランによると、アラーの神様がある預言者の忠誠心を試すために、自分の息子を生贄に差し出すように命令してん。預言者は言われた通りに、息子の首を刎ねようとした。てか、刎ねたんやけど、預言者が首を切り落としたのは実はヤギで、息子は自分のそばに立ってたっていう。
なるほどなるほど、神様が魔法か何かで息子とヤギの身体を取り替えてくれたんやね。
そう。いくら神様への捧げものとしたって、自分の子供を犠牲にするのはさすがにナシやからな。でっ、代わりに牛を使うようになってん。
ホンマは1週間前くらいに買ってきて、家で世話してから行事に臨む決まりやけど、今はみんな前日に買ってきて翌日さっさと解体して終わり。
実子の身代わり=自分の愛するもの を殺さなければならんので、本来は子供と同じくらい大事に可愛がり愛情を注いでやった上で屠殺するという趣旨のようですね。ペットを自らの手で処分するようなイメージかな。
最初は何ちゅうお祭りやと思ったけど、お肉を食べるイコール生き物の大切ないのちをいただくのだという事を改めて認識できる行事であり、日頃食卓に当たり前のように上るお肉(元・動物)への感謝の気持ちを忘れないために行う、食育を目的とした儀式なのかもしれません。やっぱり、長い年月を経て代々引き継がれてきた伝統には何かしらの意味があるのでしょう。
さらに、屠殺した牛(ヤギの場合もあるみたい)は、お肉の一部を恵まれない人々に寄付した上で、余った分を自宅で食すのが習わしだそうですが、
そんなんする人ほとんどおれへんよ。みんな自分ち用にしてるわ。だから冷凍庫に1年分くらい肉あるで。
と……そこはアジア最貧国とも称されるバングラデシュだから、綺麗ごとばかり言ってられないのかな~。
それにしても、こんなユニークな行事について今まで知らなかったなんて、まだまだ世界は広い!と痛感したのでありました。