前回、昨年バングラデシュの先生に犠牲祭(イード・アル=アドハー)について教わった記事を書きました。そのワケは、ガンビアで行われた今年の犠牲祭について、ガンちゃんから話を聞いたからです。
バングラデシュとガンビア、地理的にはめちゃくちゃ離れてますが、どちらもイスラム教国ですから、宗教的なしきたりは共通してるんですよね。
ちなみに Eid(イード)はアラビア語で「お祝い」を意味する言葉で、イードと呼ばれるお祭りは年に2回あるのだそうです。ラマダン明けのお祝いが1回目のイードで、犠牲祭(イード・アル=アドハー)はその約2カ月後に行われる2回目のイードなので、ガンちゃんは「セカンド・イード」と呼んでいます。
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念のため再度、犠牲祭の起源について、今度はガンちゃんに解説してもらいましょう。
神様がエイブラハムを試して「神のために何でもすると言うのなら、お前の息子の一人を生贄に差し出せ」って命じたところ、エイブラハムはホンマに殺そうとしてん。神様は彼の心意気だけで充分満足したんで、「殺さんで良し。今のんテストやから」って1匹羊くれて、息子の代わりにその羊を使うように言った……っていう物語があるねん。
セカンド・イードはそれに倣った、各々の家で動物を解体調理して、ありがたく肉を食べるっていう、イスラム圏の一大イベントやな。
若干バングラデシュの先生の説明と相違があるけど、信心深いあまり我が子を犠牲にしようとした父親のために神様が身代わり用の動物を用意したっていう大筋は一緒ですね。
まっ、前置きはこのくらいにしといて。
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今年のセカンド・イードが7月前半にあるっていうのは事前にチラっと聞いてたけど、実際どうやった?
なかなか面白かったよ。朝地元のモスクでお祈りしたら、9時か10時くらいから動物を解体して……その最中はまぁ正直楽しくはなかったけど。特に息の根を止める瞬間は、直視でけへんからあさっての方向向いてたわ。
てか、バングラデシュの先生は動物の屠殺処理は人を雇ってお願いするって言ってたけど、ガンビアでは自分たちでやるんですね。
うちは羊2匹犠牲になってもらったんやけど、4日前から我が家に来てたから餌やってたで。嫌やわ~
おぉ。バングラデシュの先生はお供え用の動物は前日に調達するって言ってましたが、ガンビアでは数日間ちゃんとお世話するんですね。ガンちゃん曰く、ガンビアには敬虔なイスラム教徒が多いって事やったし、ガンちゃんのパパママも信仰心厚いって言ってたんで、きっちり決まりに従ってやるんですね。
でっ、その後最低1週間は焼肉三昧。どこ行ってもバーベキュー大会やで。
キャハっ、そりゃ~テンション上がるね
そうそう、慣習通りっていう意味では、ガンビアでは貧しい家庭への喜捨もちゃんとするそうです。取れたお肉の4分の1は施しとして他所の恵まれないお家に譲るとの事。そこもバングラデシュとは違いますね。
ちなみに解体処理後、食べられる部位以外・骨やら内臓なんかの類は穴掘って埋めて、皮革に関しては業者が回収に来るようになってるんだそうです。
あと、僕の義兄がミュージシャンなんやけど、前夜にライブがあって、それが今回のセカンド・イードのハイライトやな。
なるほど、若者はそういう形でもお祝いするのね。
あっ、バングラデシュでは家の前の道路で屠殺の儀式を行うって言ってたんやけど、ガンビアでもそうなん?
ガンビアの家は大体コンパウンドやから、スペースはあるねん。
コンパウンド(compound)は、壁とかフェンスで囲まれた建物の事のようですね。
結構デカい家って事?
だからガンビアでは解体作業とかは普通に家の敷地内で出来るねん。
でも他の国・例えばトルコは、あそこはほとんど集合住宅やから、自宅でこんなん出来ひんやろ。だからトルコとかイギリスでは、羊1頭分とか支払いしたら、後は専門の肉屋さんが全部処理してくれんねん。でもガンビアはまだまだ文明から取り残された小国やから、未だに自分たちでやってるよ。
な~るほど。イスラム教圏以外の国や地域に住んでいるムスリムの人たちも、ちゃんとお祝いはするんですね。ただ、動物1匹まるまる買ってきて自分の手でお肉にするっていうのは無理があるから、出来る範囲の事をするっていう感じなんですね。
何人かイスラム教徒の知り合い(日本在住)がいるのに、どういう形でお祝いするのか全く聞いたことがないので、また機会があれば聞いてみたいと思います。